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「羊と鋼の森」を読みました【感想】

どうも国木屋 空(くにきや くう)です。

先日読んだ本がそーーーーとーーーーー良かったので感想を書きますね!

 

 

羊と鋼の森」について

 

宮下奈都さんが書かれた「羊と鋼の森」は文春文庫で出版されています。

 

本屋大賞ブランチブックアワード大賞2015キノベス!2016などの賞をとっているそうです。すごい、全然知らなかった…。

 

何か聞いたことあると思ったら、今年山崎賢人さん主演で映画化されていましたね!予告だけ見たよそう言えば…忘れてた。もう劇場でやってないやん…DVD借りよう。

 

あらすじ

高校生の時、偶然ピアノ調律師の板鳥と出会って以来、調律に魅せられた外村は、念願の調律師として働き始める。ひたすら音と向き合い、人と向き合う外村。個性豊かな先輩たちや双子の姉妹に囲まれながら、調律の森へと深く分け入っていく―。一人の青年が成長する姿を温かく静謐な筆致で描いた感動作。 

Amazonより引用しています 

 

調律師さんの話?珍しいなあと思いました。ピアノって弾けば弾くほど音がずれていくんですね。それを直してくれるのが調律師さんなのです。(雑な紹介)

 

本を読む前にあらすじを読んだわたしの感想

 

「感動作」って自分で書いちゃってるよこの本はよ…ハードル上がるぜ??大丈夫??

 

本を読んでからまず思ったこと

 

感動作や!!!

 

というわけで詳しく書いていきますね!

 

 

読んだ感想

 

※うっかりネタバレするかもしれないので、未読の人は注意してくださいね!

 

わたしの実家にもピアノがあって、たまに学校から家に帰ると調律師さんが来ていたことがあった。仕事を邪魔しちゃいけないのかなー?と思って、蓋の開いたピアノを見ることはあんまりしなかったけど。

 

わたしは4歳からピアノを「習わされて」いて、自発的に弾きたいと思ったことはなかった。母がその辺を押し切っていて、なので調律師さんを頼むのも母だった。

 

だからわたしの家に来ていた調律師さんがどこから来ていて、どこに帰っていって、調律の頻度はどれくらいなのかとか、どうやって調律師さんになるのかとか、一回調律師さんを呼んだらいくらかかるのか、一回の作業にどれくらいの時間がかかるのかは全然知らなかった。

 

学校や友人の家にあったグランドピアノの中身を見るのは好きだった。こうやって動いて音が鳴るんだなー、と目に見えるのは楽しかった。ピアノを弾くより、友人がピアノを弾いている時に中身が動くのを見るのが好きだった。

 

 

なのでこの本が「調律師さんの話」だと知った時、まず、「わたしにちゃんと読めるだろうか」と思った。

 

習いたくもないことを習わされていて、毎日練習を強要されて、好きじゃないのに時間を奪われていて、そして勝手に挫折感を経験させられて。全然楽しくなかったピアノというものに対して、「楽しめたら良かったのにな」とずっと思っていた。楽しもうと努力をしたこともあったけれど、ほとんどのことが不発に終わり、だからわたしはピアノを嫌いになって、数年がかりで母を説得してやっとやめることができて、今では何も弾けない。

 

「ピアノを学べる環境にあること」自体が恵まれていることはわかっていて、だからこそ「やめる」ということがとんでもなくわがままなように感じられていて、とても辛かった。向き不向きがあるんだよ、お母さん。

 

母は幼い頃からピアノを弾きたくて弾きたくて、中学生の頃やっとその夢が叶ったと聞いた。だから自分の子供にも習わせたいと思ったのだろう。それはたぶん「幼かったあの頃の自分に弾かせたかった」のだろうな、なんて思いながら。

 

今更もう苦い思いなどはないけれども、そういうことがあったので、「フラットな気持ちで読めるだろうか」「難しい描写などはないだろうか」「ピアノがあんまり好きじゃなくても読めるだろうか」と気になっていた。

 

それは全て杞憂に終わったのだけれど。

 

いくつかの賞を取っていて、映画化されるほどの作品だと知り、読みにくいことはないだろうと思った。じゃあ大丈夫かな?

 

 

読み進めていくと、文章が心地よすぎた。詩のような文章がずっと続いていく。情景が浮かぶどころか、匂いまであって、なんなら触れるんじゃないかと。「美しいな」って。なにが美しいかって文章がまず美しいのと、それで浮かんでくる情景も美しい。主人公の性格も美しいなって思うし、その考え方とか仕事の仕方、悩みだって美しい…

 

読むタイミングや精神状態によっては「は?結局なにが伝えたかったと?」となるかもしれない。わたしにとってベストな状態で最初に読めたことがまず幸運だったと思う。精神的に不安定な時に読んでどうなるかも試してみたい。まっさらな状態で読んだので、何か良いものがわたしの心あたりで発生して、それが全身に染み渡っていくような感覚を得た。

 

「感動作」って書いてあると、なにか大きな出来事があってそれで泣けるとか、そういうことを想像してしまいがちだけれど、この作品は違った。あー美しいな、綺麗だなって、いいものを見た時の感動。素晴らしい景色を見た時のような、自然な感動のしかた。感動させるために誰かが死ぬとかではなくて、自然に「あぁ、いいなぁ…」とため息が出るような感動。目で字を追うだけで、素晴らしい景色とか匂いを感じることができるのだなあという感動。そんなことが出来るんだという発見。

 

 

個人的に一番心に残ったのが、コミュニケーションの難しさについて。調律師には、「明るい音で」「やわらかく」「かたく」などと注文されることがあるようで、それに対して主人公と、その先輩が話すシーンがある。「必要なのは本当にやわらかさなのか」と。「やわらかい」と一口に言っても、一人一人想像するものは違う。「明るい」と一言で言っても、お客さんの思う「明るい」と自分の思う「明るい」は違うかもしれない。その意思疎通の難しさと、それを具現化しなければならない調律師という仕事の悩ましさみたいなものの話がとても印象深い。

 

わたしが見ている空の青さと、隣で友人が見ている空の青さは果たして本当に同じなのか?という疑問を持ったことがある。こういう個人的に感じる感覚のことを「クオリア」と呼ぶらしいのだけれども、同じ感覚のようで違うかもしれない。違う感覚のようで同じかもしれない。「一人一人感じることは違うんだなあ」と思っても、それをいちいち想像するのはとんでもなく大変だ。

 

高校生の頃、失恋して死にたいくらいとんでもなく辛かった時に友人に相談したら、「もっと辛い人はいる。それくらいで死にたいなんて言うな」って言われたことがある。今となっては笑い話なんだけれど、当時わたしは本当に辛くて辛くて消えたくて死にたくてたまらなかった。それをもってして「もっと辛い」ってなんだろうって。当時わたしの得た辛さの、間違いなく最上級を当時味わっていたのだけれど、「もっと辛い」ってなんだろうって。「それくらいで」って言われても、わたしにとっては最上級、これ以上ないほどの悲しみと辛さだった。「あぁ、わかってもらえないんだなぁ」って悲しくなって、なんなら怒りすら覚えた。怒りが発生する程度には元気ではあったのだけれど、「人と人とは分かり合えないな」と思った。「そりゃ戦争になるわ」と。こちらがどんな気持ちでその悩みを打ち明けたのか友人にはわかる由も無いし、わたしも友人の状態を知らなかった。もしかしたら友人はとんでもなく辛い状態にあるのにわたしのくだらない失恋の話を聞かされて怒りを覚えていたかもしれない。

 

そういう個人的な感覚の話を、「うんうんはいはい」と言って聞くことは簡単にできるけれども、それを形に残さなければいけない調律師という仕事は途方も無いなと。「明るくして」と言われても、その人の思う「明るい」とはなんだろうと。作業時間も含めて二時間くらいで、その人なりの「明るい」という感覚をとらえて、さらに反映させなければならない。どれだけ大変なことなのかと。

 

わたしがイベント関係の仕事をしていた時、上司の指示が大雑把で困ったことがあった。ポスターやパンフレットを製作する時、上司は「ここをもっと見やすくして」「もっと華やかに」などと簡単に言う。わたしはわたしなりの「見やすく」「華やかに」を反映させるべく、印刷会社のデザイナーさんと協力し合いながら作っていく。途中で確認のために見せると「ここをこうして欲しかったんだよ〜」と。

あのねえ、そんな具体的な指示があるなら言ってくれないとわかるわけないじゃない!あなたの親でも子でも恋人でも無いのだから、そんな感覚共有してないよ!

結局そのあとの仕事は時間がないのに何度も何度も上司に確認しながら進めることとなったが、ふわっとした指示は変わらなかった。それどころか「好きにやってくれていいのに」と言う。だったら完成に近いものに対して文句言うな、と。そういう日々だった。

 

わたしと上司の関係はそう悪いものではなかったし、時間にも追われていたとはいえ、すぐにお客さんに出して反応を見たりとかそういう類のものではなかった。だけどわたしは相手の意図を汲むことの難しさをこの仕事で痛感していた。だからこそお客さんの一言一言の意図を汲み、時間に追われ、自分の技量を試される上に相手の反応がダイレクトにわかるという調律師の仕事に戦慄した。

 

コツコツ毎日メモをとって、コツコツ仕事をして、コツコツ仕事場のピアノを仕事終わりに調律している主人公。わたしからしたら尊敬しかないくらい真面目で透明で。うまい言葉が言えないばっかりにお客さんからキャンセルされたりもするけれど、そこがまた不器用で魅力的に映る。

 

気づけば二時間くらいで読了していた。「ページをめくる手が止まりませんでした!」という盛り上がるような本ではないと思う。「気づけば」「読み終わっていた」という、そういう感覚で読み終えてしまった。

 

大きく盛り上がっていくような本が好きな方にはオススメしにくいけれども、一旦読んで欲しいと思う。じわじわと高まっていくと思うので、それを味わって欲しい。

仕事への向き合い方とか、兄弟のわだかまりとか、共感ポイントはたくさんあると思うので、どんな人でも読んでみて損はないと思う。

 

最後まで読んでいただいてありがとうございました!