大学生の頃、カットモデルをしたことがある。
カットモデルといっても雑誌に載るようなものではなくて、単なる練習台の方で。
友人から、
「知り合いの美容師さんがカットモデルを探している」
「カットモデルは料金が安くなる」
ということを聞き、
「安くなるなら良いじゃん!」
「なにそれ気になる!」
「どうせ誰が切ったって変わらない髪だし!」
と随分乗り気の状態で紹介してもらうことになった。
髪が伸びると面倒が多いのですぐ切りたくなる
&
お金のない学生
だったわたしには、カットモデルの響きは魅力だった。
友人に美容師さんの連絡先を教えてもらい、約束をした日に閉店後の美容室に行った。
その日は、店長さんと担当のMさんの2人が残っていた。
「店長の〇です、よろしく」
てっきりMさんと2人だと思っていたので、店長がいるんだな、と思った。
店長は美容師!という感じで少しチャラけていたが、店長っぽい威厳があるようにも見えなくはない。
Mさんは痩せ型で優しそうな人だった。
新人!という感じではなかったので、練習して技術を磨きたい人なのかな?という印象を持った。
わたしはMさんに席まで案内され、
店長はその隣で練習なんだか作業なんだか、とにかく何かをするようだった。
カットモデル、というので何か変な髪型にされるのかと思ったが、希望を言って良かったので助かった。
わたしはいつも通り、今の髪型より短くしてもらうことにした。
Mさんとは友人に連絡先をもらって日程のやりとりをしたくらいで、初対面だったので、切られながらいろんな話をした。
「カットモデルとはいえ、普通に美容室に行くのと同じじゃん!練習台とはいえ安いなんてラッキー☆」
と思っていた。
担当のMさんとはちょっと仲良くなれたんじゃないか?くらいのときにカットが終わった。
仕上がりも普通に美容室に行った時と変わらない。
「カットモデルはずっと探しているって言っていたし、伸びたらMさんに切ってもらうと良いな。これがwin-winってやつかな」
と思っていた。
切られ終わったのでお金を払って帰るのかな…と思ったら、店長が出てきた。
講評的なことをするようであった。
店長「Mくんさぁ…まず!なんで映画の話をしたの?」
Mさん「え…」
聞いているこちらも「え?」である。
まさかの会話のダメ出しであった。
店長「国木屋さんはハキハキ喋ってるじゃない!」
Mさん「はい…」
そう、わたしは外でハキハキ喋るタイプ!外面が良いタイプ!
店長「国木屋さんはアクティブな人なんだからさぁ〜。そうだよね?」
とてつもない圧を感じた…。
わたし「は、はぁ…。」
店長「ほらぁ〜!だから、映画の話とかじゃつまんないの!もっとアウトドアな話をしないとさぁ〜」
わたし「(アウトドアの話は無理だ…映画の話楽しかったよ!!Mさん!!)」
店長「あとなんでこんなに前髪切ったの?」
わたし「それはわたしg…」
店長「この髪型でこんなに前髪切ると変だよ!ねぇ国木屋さん?」
わたし「(切って欲しくてお願いしたのに、変であることが今判明してしまったんですが…。)」
Mさん「…。」
店長「あとさぁ〜…」
地獄の講評。全て的外れ…。
わたしはハキハキ喋っているのでアクティブなタイプらしいです。
思いっきり引きこもりなんですが。
こうして20分くらい好き放題言われたあと、とっても疲弊して帰宅することができました。
お金をもらいたいレベルだった。
カットモデルも楽じゃない。
…これでカットモデルは最後にする!と思ったわけではなく。
数ヶ月後、懲りずにまたカットモデルをしようと思ってMさんに連絡したら、
「バイクで事故ってしまって復帰が未定です」
と返事が来た。
Mさーーーーーーーーん!!!!!!!!!!
…めちゃめちゃ心配だったけど、前回のカットモデルのこともあって気まずい…。
Mさんの復帰はいつになるかわからないけど元気らしいことを知り、カットモデルはもうやめておこう、と思ったのであった。